概要:狭山不動尊と山口観音「何これ?」な仏教建築を堪能。ご利益は?
ホームページ無き所沢2大ミステリアス寺院探訪
2019年7月2日(火)、埼玉所沢市にある狭山不動尊と山口観音(金乗院 こんじょういん)を散歩してきた。
増上寺に浅草寺、深大寺など東京都内のメジャーなお寺からは、どんなイメージが思い浮かぶだろうか。厳か、趣き、和、癒し、観光、外国人…。
だが、東京から少し離れると「な…なんだこれは!」と思わず二度見せずにはいられない、不思議な仏教建築物に出会うことができる。
都心から1時間たらず、埼玉県所沢市・西武球場前駅から歩いてすぐの所に、それはあった。
中華風のお堂だったり、

雄々しい龍の向こうに巨大なお堂を仰ぎ見たり…

目がくらむような数のお地蔵様の山を拝んだり…

外国人観光客がアメージング!などと言っているメジャーなお寺では到底味わえないようなリアルアメージングがそこにはあった。(言い過ぎか)
風変わりなお寺だけ見てもねぇ…と感じたら、行かなければ良いだけのこと。でも、少しでも興味深いなと思ったら、気軽に行ってみれば良い。都心からもそう遠くはないし、両寺院を歩いて訪ねても1時間足らずの所要時間だ。
アクセスにはレオライナーこと西武山口線を利用したい。車輪ではなくゴムタイヤで走行する珍しい鉄道だ。お寺のみならず、そこへ至る手段も風変わりとくれば、お出かけは一層思い出深いものになるに違いない。

狭山不動尊と山口観音のご利益は?
狭山不動尊
公式ホームページが無いので正確な所は分からないが、ご本尊が不動明王。なので、「煩悩を断ち切る」というご利益が考えられる。また、西武ライオンズの選手たちが必勝祈願をするお寺として知られるため、「出世、勝負事」にご利益が考えられる。
山口観音
これまた公式ホームページが無いが、ご本尊が千手観音なので、「延命」「病をなおす」「夫婦円満」「恋愛成就」などがご利益として考えられる。また、千手観音とは別に新田義貞公の霊馬がお祀りされていて、「勝運」や「商売繁盛」にご利益があると書かれていた。
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詳細:狭山不動尊と山口観音の仏教建築物を詳しくレポ!
狭山不動尊 日本各地からお堂が集結
狭山不動尊、山口観音ともに最寄り駅は「西武球場前駅」だ。
西武球場前駅は西武狭山線と西武山口線(レオライナー)の2路線の終点であるが、せっかくならゴムタイヤで走行する珍しいレオライナーでアプローチしたいところ。車内もボックスシートで味わい深い。

さて、両寺院ともに西武球場前からは歩いてすぐの場所にある。さっそく狭山不動尊から巡ってみよう。
駅前には西武ドームが見えるが、

西武ドームを背にして道路を渡り、左手に進めば、

すぐに狭山不動尊に辿り着く。

狭山不動尊とはそもそも何なのか。

通常、寺院の歴史や由緒などは案内板やホームページで説明されるのが一般的だが、こと狭山不動尊(山口観音もだが)にはそういったものが見当たらない。
人もお寺も、ベラベラ自分語りをするよりも、多くを語らないほうがミステリアスな雰囲気になるという格好の例と言える。
狭山不動尊について確かなのは、西武ライオンズの選手たちが必勝祈願をするお寺だ、ということ。
調べてみると、1975年に西武グループが建立した寺院だそうで、開基は西武のオーナー堤義明氏。お寺の開基というと、よく「今をさかのぼる●●年に●●上人が~」というくだりをよく目にするが、このお寺を創ったのはナンチャラ上人ではない。「西武グループの堤義明氏」がお寺を建立したのである。なかなかインパクトが強い。
…と若干興奮気味だが、何を隠そうウィキペディア情報なので、どこまで真実なのかは定かではない。
余談はここまでにして、さっそく境内を回ってみよう。何気に国の重要文化財だという「勅額門」をくぐると、階段が現れる。

階段の先には、これまた重要文化財の「御成門」がある。さきの「勅額門」とともに、元は東京芝の増上寺内に建立されていたものを移築したのだそうだ。

振り返るとメットライフドーム。ちょっとシュールな光景ではある。

石塔に護られるかのように鎮座するこちらは本堂であろうか。

本堂の隣には「第一多宝塔」が立つ。桃山時代より大阪は高槻の地にあったものを昭和36年に移築したそうである。

本堂の横から伸びる階段を上っていくと、

これまた特徴的な形の弁天堂が立つ。もともとは滋賀県彦根市のお寺にあったものを移築。

続けて大黒堂。かつて奈良・極楽寺にて歌人たちが歌会を開いたお堂であったのを移築。

大黒堂前の階段を降りると、

第二多宝塔。こちらは室町時代に兵庫県のお寺に建立されたものを移築。

第二多宝塔を通り過ぎると、

石塔が立ち並び、その奥には、

桜井門という門がある。奈良県の桜井寺の山門だったものを移築。

さて、ここで問題です。ここまでで何回「移築」という単語が出てきたでしょうか?!…と、思わずクイズを始めそうになるほどに、全国各地から様々なお堂が移築されているお寺だということはよく分かった。
移築の背景は何なのか、境内の案内板からは読み取れない。うむ…やはりミステリアスだ。
ちなみに、ホームページが無いため何のご利益があるのかイマイチ分かりかねるが、多種多様なお堂のデパートと化しているため、一通りのご利益はありそうである。総合感冒薬のようなお寺である。
山口観音(金乗院) 巨大な龍に会えるお寺
さて、桜井門を抜けて狭山不動尊を後にする。すぐさま180度ユーターンし、

脇の道を下って行くと、

次の目的地である山口観音(金乗院)に到着する。参道には「観音茶屋」なる食事処がある。

さっそく境内を見ていく前に、山口観音とは?…これまたホームページが無く、所沢市の公式ホームページもおざなりな紹介。千手観音をまつっていることくらいしか分からない。検索するとまっさきにウィキペディア情報が出て来るとは、市の観光課は猛省した方が良い。
で、境内である。台湾の寺院のような、ちょっと派手なお堂。その隣には、

ひときわ大きな本堂。そして、本堂の裏手に向かって進んで行くと、


!!!びっしりと並ぶ水子地蔵。なかなかインパクトのある光景である。

さらに奥へと進むと、

竹林に鎮座する石像が並ぶが…ん?奥に見える階段に違和感を感じる。

階段に近づくと…むむっ??

グリーンドラゴンが 二ひき あらわれた!…その奥にそびえる大きなお堂。お堂の鮮烈な赤色がこれまた日本離れした趣だ。

特にドラゴンのほうは、参拝客に「なにこれ…」と言わせるために和尚さんが悪ノリで造ったんじゃないかと思わずにはいられないインパクトがある。

階段途中から振り返る。やはり異質だ…。なぜか日本むかしばなし冒頭で坊やが乗っていた竜を何となく思い出す。

いかめしい龍の間からお堂を見上げる。この写真だけ見ると、ここが埼玉県所沢市であることがにわかには信じがたい。台湾の奥地の山岳寺院か何かのようだ。


階段を登り切ったところからの眺め。龍は背びれから尾に至るまで、ディテールに凝っている。体の形も単純な直線にすれば良いものを、複雑に曲がりくねった造形にしており、和尚さんの相当な力の入りようがヒシヒシと伝わって来る。それにしても所沢市、ここまでの力作をスルーしているとバチが当たっていつか龍に食われるぞ。

龍の階段の横に目を移すと、このように石の塀のそそり立つ通路となっている。LINEで「アンコールワットに行ってきたよ!」と写真を送り付けたら信じてくれそうな光景だ。(それは言い過ぎた)

そして見上げるとこのお堂。圧巻である。

近づくと本当に大きい五重塔だ。薄々思っていたが、和尚さんは絶対にインスタやってる。「映え」の研究に余念がない。いや、だから所沢市はもっとPR頑張れ本当に。

お堂付近の木々の多い散策路を進んで行く。

坂を下りていく。

特に数が多いわけではないが、山口観音はアジサイが散在しているスポットでもある。

本堂や茶屋のある通り沿いに戻ってきた。なお、右手のお堂には新田義貞公の霊馬がお祀りされていて、勝運や商売繁盛にご利益があるという。ライオンズが優勝祈願する狭山不動尊と合わせて参拝すれば、人生の勝ち組になれるのでは…と錯覚しそうな、しなさそうなコースである。

茶屋の横には山門があるので降りて行ってみると、

小さな池のある道に出た。

このまま道をまっすぐ進めば、右手に西武球場が見える。駅はすぐそこだ。

駅からこれだけ近いところに、ちょっとした異世界を感じるとは思わなかった…。埼玉には何も無いなどとよく自嘲気味な声が聞こえるが、掘れば掘る程に奥が深そうだ。
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アクセス・所要時間など
住所
・狭山不動尊
〒359-1153 埼玉県所沢市大字上山口2214
・山口観音
〒359-1153 埼玉県所沢市大字上山口2203
アクセス
西武狭山線・西部山口線「西武球場前」下車
狭山不動尊…徒歩4分
山口観音…徒歩7分
歩行時間(施設見学時間含む)
約50分
費用
無料
飲食
周辺に飲食店は少ないが、山口観音参道に食事処がある。まぁ、駅近スポットなので、外食をするなら移動して他の場所でも良いとは思う。
周辺スポット
以下のスポットにも合わせて行ってみては。
武蔵村山の廃線跡トンネル群
徒歩で行くには西武球場前駅から1時間弱かかり健脚向けだが、かつて狭山湖建設のために造られた廃線跡を歩ける。
2020年11月東京都武蔵村山市にある野山北公園自転車道を散歩してきた。 東京では珍しい、ある程度の距離を実際に歩ける廃線跡だ。現地の雰囲気を、動画や写真とともにレポートする。 東京に1kmほど歩く事のできる廃線跡トンネルがあった【[…]
所沢ゆり園
さすがにマイナーな寺院のためだけに遠方からはるばる来るのはチョット…という場合、6・7月の所沢ゆり園の開園シーズンに合わせて訪れると良い。狭山不動尊や山口観音からユリ園へは歩いてすぐだ。
2019年7月2日(火)、埼玉県所沢市にある「ところざわのゆり園」にユリを見に行ってきた。 見頃期や開花状況とともに現地の様子をレポートする。 例年の見頃期 ところざわのゆり園のユリの数は、およそ45万株であり、例年の見頃[…]

狭山湖畔
両寺院から近く、十分に徒歩圏内だが、広く穏やかな人造湖に洒落た取水塔があるだけ。それ以外には何も無い。「ただ湖を前に風に吹かれたい」というキザな貴方ならばオススメ。( 狭山湖畔の散策の記事はコチラ )
